Haiku & Science
著名な詩人である松尾芭蕉や小林一茶はキノコに関する詩など生物に関する多くの詩を書きました。その一例が以下です。
「うつくしや あら美しや 毒きのこ」
一方、2023年3月に開催された東京都立大学シンポジウムで詠まれた以下の句は詩人ではなく科学者の卵である学部生E.Hさんのものです。
「直前に、焦って直す、スライドショー」
with no time to spare
fixing it in a hurry
seminar's slide show
E.Hさんの上記の俳句は、審査員がそこに学生生活の現実を見たからこそ、本コンテストで最優秀賞に選ばれたのです。プレゼンテーションの準備には十分な時間がないことはよくあり、これは深刻な問題であると同時に、多くの学生や教師に起こる滑稽な状況でもあります。他の生物学者の参考のために、E.Hさんがどのように俳句を作ったのか、以下のいくつかの質問に答えてもらいました。
Q1. 都立大のシンポジウムで俳句を投稿しようと思ったきっかけは何ですか。
A. 特に大きな理由はないのですが、シンポジウムに参加することになり、その際、俳句の募集があることを知ったため投稿しようと思いました。
Q2. 俳句はPCで書きましたか、それとも鉛筆と紙で書きましたか。
A. 大学生になりPC以外を使用する機会がほとんどないため、私にとって最も身近なツールがPCです。そのため、当然PCを用いて書きました。
Q3. 家で、研究室で、体育館で…など、どこで書きましたか。
A. 家で書きました。というのも、多くの方がご存じの通り俳句はどこでも書くことができます。そのため、私は実際に発表用のスライドショーを作成している際に思いついたことを書きたいと思いました。その場所が家だったため、家で書きました。
Q4. 俳句を作る上で、最も困難だったことは何ですか。
A. 俳句を書くためのテーマとそれについて書きたい内容をイメージすることが最も困難でした。というのも私自身、日常的に俳句を書くわけではないため5・7・5の音の中に自分のイメージを落とし込むことは困難だったのです。
Q5. その困難をどのように克服しましたか。
A. 自身の研究活動を始めとする学生生活の中で経験した多くの困難であった場面を想像して、その時の感情を思い返すことで克服しました。
Q6. 高校時代、俳句や日本の詩歌に興味がありましたか。
A. 興味はありませんでした。学校の授業で俳句を作ったことはありましたが・・・。
Q7. なぜ英語ではなく、日本語で俳句を投稿したのですか。
A. 英語で本当ならば投稿したいと考えていたのですが、英語での”俳句”を作成したことがなく、少し抵抗があったため日本語で投稿しました。しかし、将来的には英語で俳句を書けるようになりたいと考えています。
Q8. 俳句の厳密さ(5-7-5音節)は、科学実験に求められる厳密さと両立するのでしょうか。
A. 科学実験で求められる厳密さと俳句に求められる厳密さは美しくなければならないという面で似ているのではないかと思います。なぜなら、科学実験については常に再現性がある効率的な手法が模索されています。それと同時に俳句についても同じ意味であっても言葉の並びが常に模索されており、それらの面で俳句と科学実験における厳密さは両立するのではないかと考えます。
Q9. 科学者は俳句を作ることで思考を鍛えるべきでしょうか。
A. 答えはYesです。科学者に関わらず俳句を作ることは思考を鍛えるだけでなく神経系を若く保つためにも有効であると考えます。なぜなら、自身の言葉を美しい響きに当てはめていくという作業は頭脳を酷使しなければできないことだからです。
Q10. これから俳句を始めようとする若い科学者にアドバイスをお願いします。
A. Go for it! ぜひ、皆さんも俳句を始めてみてください。もしかすると自身の研究について良いアイデアが思い浮かぶかもしれません。私自身も今後、英語での俳句作成に挑戦していきたいと思います。戸惑うことなく挑戦することが大切です!